作品概要
1997年公開のスリラー映画『The Game』(監督:デヴィッド・フィンチャー)は、ウォール街の富裕な投資銀行家ニコラス・ヴァン・オートン(マイケル・ダグラス)が、弟コンラッド(ショーン・ペン)から贈られた“ゲーム”に参加することによって、現実と仕掛けの境界が崩れていく物語です。音楽をハワード・ショアが、撮影をハリス・サヴィデスが手がけ、上映時間は128分。製作予算は約7,000万ドル、世界興行収入は約1億0,942万ドルにのぼっています。
あらすじ(ネタバレあり)
サンフランシスコに暮らすニコラス・ヴァン・オートンは、父親が自身の48歳の誕生日に自殺した過去を抱えて孤立しています。弟コンラッドは、彼の48歳の誕生日に「CRS(Consumer Recreation Services)」という会社が提供する“人生を変えるゲーム”への参加券を贈ります。
ニコラスは興味半分で審査に臨むものの「不適格」とされます。しかしその直後からテレビのニュースキャスターが突然ニコラス宛てに語りかけたり、道化人形の中の小型カメラが監視していたりと、日常に不可解な出来事が連続します。
ある夜、タクシーで湾に転落し、命からがら救出された後、彼はウェイトレスのクリスティーンとともに逃走しますが、実は彼女もCRSの一員でした。薬を盛られたニコラスはメキシコの墓地で目覚め、資産と名誉を失ったと信じ込まされます。
帰国後、CRSの担当者が“俳優”であったことを突き止めたニコラスは、クリスティーンを人質にCRS本部へ乗り込みます。屋上で追い詰められ、銃を向けて扉を開けると現れたのは弟コンラッドでした。ニコラスは誤って弟を撃ったと思い、自らも屋上から飛び降りますが、そこには巨大なエアバッグが仕掛けられており、全ては弟が兄のために準備した「誕生日プレゼント」だったのです。銃は空砲で、すべて演出された“ゲーム”でした。
最後に、正体を「クレア」と明かしたクリスティーンと空港のカフェで会う約束をして、物語は幕を閉じます。
より詳しいストーリーや演出解説については、映画『ゲーム』のネタバレあらすじと感想を参照すると、細部の仕掛けや心理描写の意図を理解しやすいでしょう。
制作背景・撮影
本作の脚本は、ジョン・ブランカトーとマイケル・フェリスが1991年に執筆したスペック・スクリプトが起点となっています。企画は長らく難航しましたが、最終的にデヴィッド・フィンチャー監督が参加。彼は『セブン』でも組んだアンドリュー・ケヴィン・ウォーカーとともに脚色作業を行い、主人公ニコラスのキャラクターやトーンを練り直しました。
撮影は主にサンフランシスコで実施され、ニコラスの邸宅シーンはウッドサイドにある歴史的邸宅「フィローリ(Filoli)」がロケ地として使われています。夜間の質感を強めるためにENR(エンハンスト・ニューレド・プリント)処理が採用され、視覚的な緊張感を演出しました。
ロケーション
本作で登場する主要なロケーションは以下の通りです:
- ニコラス邸:Filoli(86 Cañada Rd, Woodside, CA)
- サンフランシスコ金融街、プレシディオ、ゴールデン・ゲート・パーク
これらの場所が物語の舞台として効果的に使われ、主人公の孤立・富・監視というテーマを地理的・空間的にも支えています。
興行・公開情報
『The Game』は1997年9月12日に北米で公開されました。初週末の興収は約1,433万ドル。最終的な世界興行成績は約1億0,942万ドル(北米:約4,832万ドル、海外:約6,110万ドル)です。
上映時間は128分、配給はポリグラム(PolyGram)です。
評価と批評
批評サイトでは概ね好評を得ており、Rotten Tomatoesでは批評家スコア77%、観客スコア84%となっています。レビューの総意としては「結末にやや難があるものの、雰囲気と語りのコントロールにフィンチャーならではの手腕が光る」というものです。ロジャー・イーバートは4点満点中3.5点をつけ、「ダグラス演じる男の人生が制御から崩壊していく様、第1幕から第3幕への転換を巧みに捉えている」と評価しました。Metacriticでは63/100を記録しています。
より深い考察を読みたい場合は、映画『ゲーム』徹底解説とラストの意味を参照すると、伏線や象徴構造の読み解きが一層明確になります。
テーマ・読み解き
本作には以下のようなテーマ・構造が明らかに存在します:
- 現実そのものが映画的装置によって侵食される構造:映画内で「演出」される現実が主人公を支配します。
- 富裕層の孤立と倫理的空虚:ニコラスは物理的・精神的にも、高い位置にありながらも孤独を抱えています。
- 弟から兄への贈り物としての“ゲーム”:構造として兄弟関係を媒介にしつつ、人生の再構築が進行します。
これらのテーマは、作品が描く具体的な描写(監視カメラ、小道具、俳優・役者の介在など)に裏付けられており、『The Game』というタイトルそのものがメタ的に機能していると言えます。
まとめ:視聴後の視点
この映画は、単なるサスペンス・スリラーという枠を超え、観客に「現実とは何か」「制御とは何か」を問いかけます。主人公ニコラスの旅路は、最後に“救済”を迎えるものの、その過程で私たちは自らが観ている「映画」「ゲーム」「人生」という三重構造に気づかされます。
『The Game』を観た後、その構造の巧妙さにもう一度見直したくなる作品です。もし未視聴ならば、予備知識を控えて体験するのも良いでしょうし、「どう演出されていたか」に注目しながら観るのもまた別の楽しみとなるでしょう。

